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短篇小説



海とかもめ 最終回

kamome.jpg

▼この作品の登場人物は全て架空の人で
実在していません。
全て空想で書きました。
どうか応援して下さい。


夏が過ぎ秋も過ぎて寒くなった頃、意外にも朱美は突然大学を止めた。
あまりにも急だったのでカモメは大きな衝撃を受けた。
国文科なんかで勉強しても将来何の役にも立たないからというのが止める理由らしかった。
それにつれて短歌部も止めることになったが、代わりに「しらたま」と言う社会人達の短歌のグループに所属した。
カモメには一言も言わないで一人で入会してしまった。
「しらたま」は二人にとって以前から憧れの同人雑誌だった。
あんなに仲良しだったのに...と、かもめはそのことが意外だった。
入会する時は二人一緒に入るとばかり思っていたので・・

何だか裏切られたみたいな気持ちがして、自分も即座に国文科を止めてしまいたいと思うほど淋しかったけれど、その時のカモメには、どうするという思案も浮かばず、仕方なく最後まで国文科で勉強を続けることにした。

それから長い間、カモメと朱美は逢って居なかった。

朱美は方言研究旅行で出逢ったあの時の人とは別の人と結婚した。
父親の会社で働いている人で、顔立ちのステキな人が居ると学校に来ていた頃にカモメによく話していたその人が相手だということだった。
長男が自閉症で苦労してるという噂だった。
勿論、カモメもあの時の人とは別の人と平凡な結婚した。

実は一月ぐらい前に久し振りに朱美に電話を掛けてみた。
「朱美から何にも連絡が無いから、どうしてるかなぁと思って掛けたのよ・・短歌続けてるんでしょ・・!?」
朱美は以前とちっとも違わない明るい声で
「私、短歌はもう止めたのよ。短歌なんて不幸せな時に詠むものだからね。
私って今ではすっかり幸せになれたから詠む必要が全く無くなったのよ...主人が優しいのでね。」と言った。
「そうだったの・・朱美の旦那さんって、ずい分ハンサムな人だし、良かったわ・・」
とだけカモメは言って、それ以上、これと言って話す言葉も無く電話を切った。

電話の後、何だか朱美の言葉にがっかりして、何時までも淋しかった。

自分はあの後も孤独に耐えながら、細々と大学の短歌部に入った儘、短歌を詠み続け、人間として当たり前の色んな辛い経験もして今に至っている。
けれども、自分のことを不幸せだなんて思ったことは一度もないし、短歌は不幸せだから詠むものではないと思っている。

途中何度も挫折して短歌を一首も詠まない時期もあったことはあったが・・.

あ、青い海の上を白い鳥が一羽だけ飛んでいる。
あれは か・も・め...私と同じ名前の鳥だわ。

「白鳥は悲しからずや海の青空の青にも染まず漂ふ」

牧水の一首を口ずさんだ。

その時、階下からカモメを呼ぶ声がした。

「母さん! 早く昼飯作ってよ! 俺たち明日までに大学に戻らないといけないから...早く、早く!」

今年K大学の医学部に入ったばかりのイチローが友達を連れて昨夜から来ているのだが、そろそろ出掛ける時間が近づいて来たのだろう。

カモメも今日あたり大阪に帰るつもり・・

「はい、はい、判りましたよ! 」
カモメは急いで階段を駆け降りて行った。

ー終わりー






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