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短篇小説

メダカの銀次郎 最終回

medaka3.jpg

▼この作品の登場人物は架空の人で実在していません。
全て空想で書きました。
現代社会を生きるお婆さんとメダカの銀次郎の心暖まる物語り・・
応援よろしくお願いします。
短かくて読みやすいです。 


「あ、しまった!もっとそっと水を入れるべきだったわ。」
銀次郎が如何にもビックリしたと言わんばかりに、瓶の中を大きく旋回した。
瓶の底の方からくすんだ緑色の苔が舞い上がってガラス瓶の中が大騒動になったので、お婆さんは吃驚して慌てゝしまった。
(銀次郎が死なないかしら・・?)と急に心配になった。
メダカって、ちょっとしたことで、すぐに死んでしまうか細いところがあるし、現に少し前に死んだ2尾がそうだったから・・
でも、お婆さんは三角錐の形をしたガラス瓶の中を如何にも心配そうに覗き込みながら銀次郎が大丈夫、ちゃんと生きているのを見届けて、ほっとした。
「ねえ、銀次郎や!死なないでおくれね。私を一人ぽっちにしないで…一人は淋しくて仕方が無いから…お前だけが頼りなんだからね。頑張ってちょうだいね・・」
お婆さんは銀次郎に話し掛けると、銀次郎は如何にも「大丈夫だよ。お婆さん!」と言ってるみたいに、何時ものように尾っぽをぴろぴろ動かしながら水面まで上がって来てお婆さんの顔をじっと見ていた。
「そうかい。そうかい!それでこそ安心したよ。」
お婆さんはほっとすると何時もの刺繍の仕事をする時に座っている椅子の所迄歩いて行って、また「よいしょ!」と腰を下ろした。
「それにしても、銀次郎!お前もやっぱりお嫁さんが欲しいよね。明日、午前中僅かでも義援金を郵便局に送りに行ってその時、もし時間があったら、もう一度お嫁さんを探しに行って来ることにするよ。前のはどちらも体が弱くってすぐに亡くなってしまったものね。今度こそ丈夫で元気なお嫁さんが銀次郎に見つかると良いのにね。だから、もうちょっと待ってておくれ!」
お婆さんは銀次郎の泳いでいる三角錐の形をしたガラス瓶の方を見ながら言った。
「あ、そうだった。昨日から、ずい分あちこちが痛いので湿布薬を貼らなければいけなかった・・」
お婆さんはもう一度椅子から「よいしょ!」と立ち上がると救急箱の置いてある棚の所まで歩いて行った。

kyuukyuubako.jpg

湿布薬を救急箱から取り出すと、又、椅子に戻って、肩と背中と腰に、手を伸ばして苦労しながら何枚も貼り付けた。
もし、他に家族が居たら貼って貰えるところなのに・・
窓から射す光は先ほどよりもいっそう鈍くなって、部屋はインク色をした夕闇色が濃くなった。
お婆さんは刺繍針に綺麗な赤い色の刺繍糸を通すと、カーディガンに刺繍の続きをし始めた。
何時の間にか部屋がすっかり暗くなったのでお婆さんは電灯を点けて、その儘、刺繍をずっと刺し続けた。

denntou.jpg

いったいどれ程の時間が経っただろう。
何時の間にか部屋の窓からの光が白々と明るくなり始めていた。
お婆さんは椅子に凭れて顔を仰向け静かに眠っている。
色白の顔が朝の光に何時もより、いっそうほの白く見えている。
膝には刺繍をしている途中のカーディガンが被さるように置いた儘だった。
針は毛糸に刺された儘になっていて、手はすでに力が全く無いと言わんばかりに、だらんと両脇に下がっている。
お婆さんはまったく動かない。
よ~く見ると何と、お婆さんは死んでしまっているのだった。
如何にも安らかな顔をして…
きっと天国で神様とお話しをしているのだろう。
唇がほんの少し笑っている。
窓際では、細長い三角垂の形をしたガラス瓶の中で、今しがた目を覚ましたばかりのメダカの銀次郎が緑色の水藻の透き間を元気よく泳ぎ廻りながら水面まで上がって来ていた。
お婆さんが天国に旅立ったことを果たして知っているのだろうか…

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-完-




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