くろねこ時計


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短篇小説

「一眼レフ 20

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現代社会に生きる平凡な中年世代の
男女、麻子と岡田の物語り・・
日常によく有りがちな何でもない出来事を
ロマンチックな短篇小説として書きました。
創作して書きましたので、登場人物は全て
架空の人で実在していません。。



麻子と会社の上司の3人は慌ててベッドから離れ医師と看護婦が動き易いように場所を開けた。

若い看護婦は足早に功の寝ているベッドに近付いて行くと、持って来た黒いケースの中から体温計を取り出して、功の着ている白い蒲団を手早く捲り、「じゃあ、体温を計って下さいね。」と寝巻きの隙間から手を差し入れて患者の脇に挟み込み、「点滴がちょうど済みましたね。」と上を見上げて言いながら空っぽになった瓶のネジを締め、注射器の針を腕から外し、てきぱきと仕事を忠実に進めて行く。

その様子を見ながら麻子は(浅田さんとは違って、さすが看護婦だわ。動きが爽やかで実に気持ちが良い‥)等と密かに思う。

功と同年齢ぐらいに見える医師は医師で、首に引っ掛けてある聴診器を耳に付けると看護婦の手で手早く開かれた功の白くて薄べったい胸に、聴診器の片方の器具を当てながら暫く心臓の音を聴いている。

「その後どんな具合ですか?」
医師は静かな声で功に尋ねる。

「たまにまだ胸の辺りが苦しい気がします。」

「そうでしょうね。かなり無理をしていたのでしょう。元々弱い心臓がかなり弱っています。暫くこの儘入院して頂いて検査をしないといけませんね。もしかすると他の臓器にも問題があるかもしれませんので‥」
医師は小さな声でもきっぱりとした口調で言う。

「まぁ、すぐに退院出来ないのですか?じゃあ、後どれぐらいの日数入院すれば良いのでしょうか?」
浅田さんが何と妻の麻子よりも先に医師に尋ねる。

「さあ、それはまだ今ははっきりと申し上げられません。」

「そうなんですか‥」
浅田さんは又功の顔を如何にも心配そうに見る。

(これでは妻である自分の出る幕が無いわ。)
麻子は女の上司にすっかり閉口してしまい言葉が全く出ない。

「熱は36度5分で平熱です。」
看護婦が医師に伝える。

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「そう。では検査の日程がわかり次第お知らせしますので‥」
医師と看護婦が部屋から出て行くと、

「じゃあ、僕たちもそろそろこれで失礼します。」と男性の上司も続いて言う。

「功さん、私、又すぐに来ますからね。仕事のことは何とかなるから気にしないで‥今は体を元気な元の状態に戻すことだけ考えていてね。じゃあ、今日は一先ずこれで帰りますね。」
浅田さんが名残り惜しそうに功を振り返りながら男性上司に続いて、麻子にちょっと会釈すると病室の出口の方へと向かった。
「色々と有り難う。」
功がそんな浅田さんにちょっと笑いながら如何にも親し気に片手を上げている。

病室に再び元の静寂が戻る。

暫くして、

「あの浅田さんという女の人と貴方とはかなり仲が良いみたいね‥」

麻子は窓ガラスの外の美しい青空に流れている白い羊雲の一つを見ながらポツリと言う。

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「そうかな‥そんなことは無いと思うけど‥」

「でも、確かにそんな風に見えたわ‥」

「少し考え過ぎじゃないの?」

麻子はそれ以上はもう何も言わずに黙っていた。

(考えてみれば、功さんは会社に居る時間の方が、家に居て私と過ごす時間よりもうんと長いのだから、私よりあの女上司と仲良くなっても当たり前なのかもしれない‥)

その時ふと、白い雲の隙間に戦国の武将のように凛々しいあの岡田さんの優しい笑顔が浮かんで見えた。

ー続くー



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