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短篇小説

「一眼レフ 最終回

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現代社会に生きる平凡な中年世代の
男女、麻子と岡田の物語り・・
日常によく有りがちな何でもない出来事を
ロマンチックな短篇小説として書きました。
創作して書きましたので、登場人物は全て
架空の人で実在していません。。


車道の車の流れは午前中よりももっと激しかった。

きっと先程の地震が原因で交通が停滞して交通網が乱れたからだろう。

バス停で暫く待っていると、案の定バスが予定の時刻よりだいぶ遅れて来て三人は急いで乗り込んだ。

basuirasuto.jpg

バスの中も何時になく混み合っていて、人々の隙間に立った儘だった。

「酷い地震やったですね。」

「ホントに怖かったですね。ウチは台所の戸棚の蓋があの酷い揺れで勝手に開いて食器が沢山滑り落ちて割れて仕舞いました。やっと掃除が済んだので出て来ました。又何時揺るか判らないので保存食とか懐中電灯をもう少し買って来たいと思って‥」

「そうなんですか。やっぱりね。ウチは戸棚が揺れないように、釘で壁に戸棚を引っ付けて補強してあったので、お蔭で食器は全然割れなかったです。でもね。私は血圧が高いので今から掛かり付けの病院に行って血圧のお薬をもう少し余分に貰えるようにしたいと思って街まで行きます。あんな強い地震が又来て身動き取れなくなったら困りますので‥何しろ薬は切らすワケにはいきませんのでね。」

口々に人々の話す声が聞こえる。

その間も麻子は夫の功のことが気掛かりでじっとして居られず、そっと携帯を出して何度も電話を掛けてみたが相変わらず繋がらない。
(病院が無事でありますように‥功さんが大丈夫でありますように‥)と祈り心になって、早く家に帰って一秒でも早く功さんの寝巻きの着替えを持って病院に行かなければ‥と心が逸(はや)る。

バスの窓からは相変わらず真っ青な秋の空が見えている。

バスは一路日生中央駅に向かって走り続けている。

その時、不意に手に握り締めている携帯電話のバイブがブルブル‥と激しく作動したので急いで待ち受けを見ると電話は夫の功からだった。

ホントは普段バスの中は携帯で話すことを禁じられているのだが、今はそんなことは言っていられない。

麻子は電話を耳に当てると控え目な小さな声で、
「もし、もし‥功さん、私よ。大丈夫なの?」と聞いた。

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すると、功の声がした。
「もしもし‥麻子かい?俺は大丈夫だよ。それより麻子こそ大丈夫かい?ずいぶん心配したよ。何度も電話を掛けたんだが繋がらなくて‥」

「私だって何度も電話したんだけど全然繋がらなかったわ。実は今はバスの中にいるのよ。一眼レフで屏風岩の近くの川を撮しに行ってたら地震になって‥」

「そうだったの‥これで、やっと安心したよ。麻子が無事で何よりだった。」

「私も功さんが無事でホントに良かったと思う‥」

「実はね。今朝検査が何もかも済んでね。特には問題が何も無いとの事で『今日中に退院して下さい。』と病院から言われたのだよ。麻子にその事を報告しようと電話している最中にあの地震が起きたんだ。」

「まぁ、そうだったの‥」
麻子は嬉しくて思わず涙が零れた。

「じゃぁ、私、今から直接病院に行くから功さん、待ってて・・荷物をまとめて持って帰らないといけないものね‥又、後で電話するから‥」
何時までも話していられないので電話を切った。

「ご主人からだったみたいですね。」
岡田さんが尋ねた。麻子のことをまるで自分のことのように心配してくれている。

「そうなんです。主人からでした。」

「良かったですね。」

「はい、岡田さんには何から何までご心配をお掛けして申し訳ありません。」

「お互い様です。僕だって写真展の時には麻子さんにわざわざ来て頂きましたよ。」

「麻子さん、ホントに良かったですね。」
奥さんも横から如何にも嬉しそうに顔を覗き込むようにして言う。

「はい、有り難うございます。」

そうこうしている中にバスが日生中央のバスターミナルに到着した。

人々に混じって三人もぞろぞろとバスから降りた。

「じゃぁ、麻子さん、今日の所はこれでお別れですね。思いがけず朝バスの中でお逢いして一緒に一眼レフで川を撮しに行けて、地震なんかに逢いましたが、それも又思い出の一つになりましたね。出逢えてホントに良かった・・」

「はい、私も今日はお二人に出逢えてホントに幸せでした。」

麻子は岡田さん夫妻と握手を交わした。

「じゃぁ、麻子さん、これからも、一眼レフで写真を沢山撮して又是非見せて下さい。判らないことがあれば、僕に何時でも電話して下さい。待っていますよ。」

「はい、そうさせて頂きます。」
名残り惜しかったが、別れを告げて歩き始めた。

後ろを振り返ると二人の姿が朝現れたビルの蔭にちょうど隠れるところで、間もなく見えなくなった。

空が仄かに茜色に染まっている。

涙が堪えようもなく溢れて流れ落ちる。

yuuyake 10

ー完ー




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